大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(う)584号 判決

被告人 有限会社大木興業 外一名

〔抄 録〕

農地法にいう「農地」とは、「耕作の目的に供される土地」をいうのであるが(同法二条一項)、同法の目的(同法一条参照)にもかんがみると、右「農地」にあたるかどうかは、土地登記簿上の地目いかんにはよらないとともに、所有者あるいは使用者の主観的な使用目的いかんによるものでもなく、当該土地の客観的な状況、すなわち現況に基づいて判断されるべきものであって、現に耕作されている土地は勿論、休耕地等で現に耕作されていなくても、容易に耕地に復旧して耕作することができるものをも「農地」と解すべきである。

これを仮整地部分を除くその余の本件土地についてみると、前示のような事実関係からすれば、被告人大木が本格的に埋立整地を開始する前はいうまでもなく、その後小山市農業委員会事務局職員が右埋立を現認し行政指導を開始した昭和五五年一月八日当時においても、残土が相当部分にわたって搬入されてはいたものの、その余の部分は耕作可能状態にあり、残土が搬入されていた部分も、これを除去するなどして、容易に耕作しうる状態に復旧することが可能な状況にあったものと認められ、未だ所論のように耕作不能の状態にあったものとはいえないから、本件土地が農地法にいう「農地」にあたることは明らかである。また、仮整地部分は、前記のとおり容易に耕地に復旧し得る状態にあったのであるから、同部分もまた、「農地」と解すべきである。

ちなみに、その後本件土地上には前記倉庫等が建築され、栃木県知事から原判示の各命令が発せられた昭和五六年七月二日当時においては、本件土地は、もはや農地とはいえない状態になっているが、右各命令の権限を規定する農業振興地域の整備に関する法律(以下「農振法」と略称する。)一五条の一六第一項、農地法八三条の二第一項の規定の趣旨にも照らすと、右各命令権限を発動するにあたって、当該土地が農地であるかどうかは、原則として、各命令の事由となった開発、転用等の行為が開始された時点における現況によるべきであって、当該命令を発する時点における現況によるべきものでないことはいうまでもないところである。従って、本件倉庫が、建物登記簿に登記され、家屋台帳に登録されていることや、本件土地について現況宅地として固定資産税が徴収されていることなど、所論指摘の諸点は、いずれも本件土地が前記各命令の発せられるべき「農地」と認めるにつき何ら妨げとなるものではない。

職権により調査するに、原判決は、「罪となるべき事実」として、公訴事実どおりの事実を認定した上、「法令の適用」の項において、「被告人の判示第一の所為中、農振法に基づく栃木県知事の命令に違反した点は同法二四条三号、一五条の一六第一項に、農地法に基づく同県知事の命令に違反した点は同法九三条三号、八三条の二第一項に、判示第二の所為は都市計画法九一条、八一条一項に各該当するところ、右各罪の所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、被告会社に対しては同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、右刑期又は罰金額の範囲内で、被告人を懲役八月に、被告会社を罰金四〇万円にそれぞれ処し、情状により同法二五条一項を適用して被告人に対しこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文により被告人及び被告会社に負担させることとする。」と判示していることが明らかである。

そこで、まず被告人大木についてみると、原判示「罪となるべき事実」の記載によれば、原判決は、起訴状記載の公訴事実どおり、被告人大木は、被告会社の業務に関し、被告会社に対する原判示第一の原状回復命令及び是正命令、同判示第二の除却命令に、それぞれ違反したという事実を認定したものと認められ(原判決は、起訴状記載の公訴事実どおり、被告人大木に対する命令書である栃木県達第七六号及び小山市達都第一九八号三を挙示しているが、被告人大木自身に対する命令違反の事実が起訴されているものとは認められず、原判決も右事実を認定したものとは認められない。)、そうであるとすると、被告人大木は、農振法二五条、農地法九四条、都市計画法九四条のいわゆる両罰規定に、それぞれ「行為者を罰するほか」とあることにより、農振法二四条三号(一五条の一六第一項)、農地法九三条三号(八三条の二第一項)、都市計画法九一条(八一条一項)の各罰則の適用を受けるものと解すべきであるから(最高裁判所昭和五四年(あ)第一四五一号同五五年一〇月三一日第一小法廷決定・刑集三四巻五号三六七頁、同昭和五四年(あ)第一二五七号同五五年一一月七日第一小法廷決定・刑集三四巻六号三八一頁参照)、前掲のとおり、被告人大木につき右各罰則規定のみ挙示し、前記各両罰規定を挙示していない原判決は、結局、同被告人について処罰の根拠となる法令の適用を遺脱したことに帰し、右の点において、理由不備の違法があるものというほかはない。

(草場 半谷 龍岡)

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